セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~
ネタバレ注意
・ジャンル 青春-自己-探索-ミステリアス-認識-アドベンチャー
・開発 テクスト
・販売元 日本一ソフトウェア
・CMを見て思ったこと
フリーのノベルゲーム、TRUE REMEMBRANCEを現代の高校生、青春をテーマに描いたらこんな感じだろうか。
過去を想いながら今を生きていく女の子、もしくは寿命を迎える直前の女の子の話だろうかと思った。
エロゲによくあることなのだが、CMに使われているグラフィックの種類が多すぎて初見のプレイ中に初見ではないグラフィックをたくさん見ることになる。
この作品はそのパターンだと思った。
。
・実際にプレイして思ったこと
冒頭のとあるテキストが表示された時点で、今を生きていく人間たちを描いた物語ではないことが分かった。
さらに言えば、過去の改ざんや記憶の書き換えを行うわけでもないので救いがない。しかしながらオカルト要素は満載。
→オカルト要素があるのならばそれが救いの方向に働いてもよかったのではなかろうかと思った。
おまけ小説、ファーストノベルの完成度が高い。
→個人的には田中ロミオ氏、唐辺葉介(瀬戸口廉也)氏の物語が好きで、この作品を機に両氏の作品に触れるようになった。
→セカンドノベルがそういった触れる機会の少ない作品に触れるきっかけを作るために作られたものだとするのならば大成功なのだが…
ストーリー
夏の休暇を利用し、久しぶりに故郷に戻ってきた直哉は、高校時代の友人・彩野と再会する。だが、彩野は5年前の事件の後遺症で15分しか記憶を留められなくなっていた。
直哉とともに過ごす内、彩野は「彩野が高校時代に書いていたという物語」という、今まで思い出すことのなかった記憶を取り戻していく。
その記憶を繋ぎとめようとする直哉は、15分という限られた時間の中で、物語を少しずつ紙に書き留めていく。
ゲームの流れとしては、
記憶が途切れる病を抱える彩野から15分に相当する話を聞いて、少しずつ話を選択肢によって整理し、1日の終わりにそれをダンガンロンパのクライマックス推理のように話をまとめていく。過去の話を聞く→まとめる→1日の終わりに考察、残った謎を解く選択肢なしのシナリオが始まる。を繰り返す。
選択肢は逆転裁判のようにキーになるもの言葉を見つけるたびに増えていく
・良かった点
ストーリーとシステムがとてもうまくシナジーしている。
どちらともいえることだが、仕様ゆえに同じ話を何度も読まされる。
→数日ぶりにプレイするときにはありがたいが、連続でプレイする分には非常に煩わしい
シナリオの完成度が高い
→中だるみがないわけではないが、各章伏線の回収をきちんと行っていて後半に熱くなれる展開が必ずある
→オカルト的な内容ではあるが奇跡などに頼らずにきちんと話を作っている
→現実にも起こり得る身体的な障害を扱っているため、強すぎるファンタジー色は合わなかったのだろうと思う。リアルな部分はリアルに描かれているために、結局は救われないシナリオというのも記憶障害は適応規制のひとつであって、それは忘れないと生きていけないからそうなったということである。
その原因となった過去を主人公は辿っていくわけで、進めば進むほどどんどんと暗くなっていくため好き嫌いがはっきり分かれると思う。
キャラクターが良い
→安易にビジュアルや萌えに走らず、人として魅力的に思えるように描かれている
・つまらなかった点
数多くのノベルゲームを作ってきた会社とは思えない稚拙なUIとシステム面
よくあるADVとは違った分岐というシステム。物語が分岐する箇所はいくつもあるが、ノーヒントでは見つけることが困難。しかしそれを見つけない限りストーリーは進んでいかない。
絵が上手くない。
→立ち絵が同一人物なのか、声を聞くまでわからない
システムメッセージの表示回数が多すぎる。
使用可能なキーワード(=選択肢)が増えることでストーリーを進めれば進めるほど難易度が上がるはずが、ヒロインから「○○を選んで」といったヒントどころか答えが与えられてしまっていてゲーム性が著しく損なわれている
一人称が統一されていないなど、文章に粗がある
語り手が変わったときにそれを気付かせる演出がない
主人公の青年は、大切なことを口に出せない性格という設定があるが、すべきこと必要なことをやらない シーンが多く非常にイライラする
→虐待の黙認。シナリオ上、この設定は全く必要がない
シナリオ面でヒロインの過去を彼女の口から聞いていく設定をうまく生かし切れていない
→他人の口から過去を聞くという設定なので、真実と虚構の境界線を曖昧にすることで前後の矛盾などからプレイヤーが考察をしながら楽しむという作りにできたはずだがそれが無い
さらに言えば、
真実が明らかにされない
製作者のコメントを見てきたのだが、答えはプレイヤーの中にある とのこと。
考察をさせるゲームとしてはありなのかもしれないが、個人的には怠慢のように思える。
制作サイドが隙間を用意せずとも二次創作や考察というものは良い作品には自然とついてくるものだと考える
スキップ機能が使いにくい。非常に遅い
・どう直すか
シナリオ面
前述したが、身体的な障害を扱うということはそれに向き合うということがテーマになっていく。そのためにシナリオはへヴィで暗いものになっていく。
今作はそういった重苦しさを、ビジュアル的に利用しオカルト要素を混ぜることで上手く中和しているように思う。
が、物語冒頭でヒロインの記憶を司る海馬領域が死滅していて高校生の夏から時間が進んでいないと明記してしまったがために、救済の要素もなく最後まで彼女は永遠の夏に閉じ込められたままである。
救おうが救うまいが賛否両論になるだろうが、生きていく理由や希望といったものを見つけて終わってもよかったのではと思う。それも結局忘れてしまうことになるのだが…。